さつきです
ブログを継続するのは体力がいりますね
先週、こづえがエッセイの書き方が知りたいということで、佐藤雅彦の『ベンチの足』という本を買ってきました。

佐藤雅彦はピタゴラスイッチやだんご三兄弟などを作った有名デザイナーで、この本は雑誌『暮らしの手帖』に連載していた文章の選り抜きです。
その中の「○○○○○問題」という文章がなるほどね…となったので紹介します。
「○○○○○問題」とは
普段からその問題に何度も遭遇しているのに気に留めていない問題、「問題化していない問題予備軍」を「○○○○○問題」という文章のテンプレートに当てはめ言語化してみる、という試みです。
筆者は、何年も通勤に使っている駅の階段で、ある日突然よろけてしまったことをきっかけに、初めて階段の一段目の段差が短くなっていることに気がつきます。躓くまで「問題アリ」と認識されなかった段差のように、日常には問題として意識する前の問題予備軍が潜んでいます。それら予備軍を認識外から引っ張り出してくる(この思考がそもそもデザインの本質なのですが)ためのデザインだというのです。
入れる器があると何かで埋めたくなるように、書式を与えられるとどんな言葉で埋めようか考え始めることができます。例えば、
「戸塚駅の階段の段差がひとつだけ違ってつまずいてしまう問題」
「イギリスパンがトースターからはみ出て上の方が焼けない問題」
「電車に座っていると、降りる駅の3駅前から急に眠くなる問題」
「薄くて軽いからとiPadを買ったのに、キーボードを付けたりカバーを付けたりしたらPCより重くなって鞄に入らない問題」といったかんじで。
ちょっと、なんとかの夜ふかしみたいですね。
私も何個かあります
「歯を磨いた後に物が食べたくなる問題」
「深夜の太りやすい時間にジャンクフードが食べたくなる問題」
「出勤前に限って腹が減る問題」
飯ネタばっかで恥ずかしいですね。
しかしながら、この問題を絶妙に捉えて店の味に生かしているイチオシの店があるのです。
一由そば

日暮里にある老舗立ち食い蕎麦屋の「一由(いちよし)」というお店です。
この店は24時間営業で、深夜にお腹が空いたスウェット姿の人や、工事現場のおじさん、飲み会帰りのサラリーマンなどで夜中にもかかわらず行列ができます。朝には出勤前の労働者で溢れ、隣のコインパーキングで立って食べている人もいるほど。

ここでは、たくさんのトッピングから自己流にカスタマイズしてコールするので、二郎ラーメンより難易度が高く緊張しますが、通っぽさがあります。
名物は太そばとゲソ天です。濃ゆいつゆに浸されたうどんのように太い蕎麦と、ぶつ切りのイカゲソがごろごろ入った天ぷらは食べ応えがあり、一杯で満足できます。
サイドメニューのゲソいなりという、ゲソと紅ショウガを刻んで混ぜたいなり寿司もセンスがあります。

そう、美味しいものを完全に理解しているし、ネーミングからして人心を完全に掌握しているのです。なんだJKB(ジャンボかき揚げB)って、ただ口に出したいだけで注文するだろ…
そして、何が一番すごいって、2オペで回しているのですが、一人は奥で仕込みや洗い物をして、もう一人は注文を聞いてから蕎麦を作りつつ全部のお代を暗算して会計までこなすところです。それを1、2分で回していくのだからもはや職能ですよね。超忙しいのに、それでいて嫌なかんじがありません。短気な私も見習いたいところです…
こづえも最近はまっており、二人で朝方に食べに行ったりしています。美味くて安くて痒いところに手が届く、本当は教えたくないけど食べてほしいおすすめのお店でした。
http://ichiyoshisoba.com ←一由HPリンク

〆
エッセイが書けるようになりたいという話からデザインの話になり、立ち食い蕎麦の話になり、疲れてしまいました(汗)
しかし今回、妙に立ち寄ってしまう蕎麦屋に、なにが痒くてどこに手が届いているのか、理由を付けられました。妙に惹かれるエッセイの書き方はまだわかりませんが、何がしかそこにはデザインが存在すると思うので、これから徐々に模索していきたいです。
あと、○○○○○問題考えてみてください。
さつき



出典:
『考えの整頓 ベンチの足』佐藤雅彦 2021年 暮らしの手帖社 p.74-82
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